透明な時間

noteでの連載をやめて、10日ほどが経ちました。

自サイトの立ち上げは、予定より少し遅れています。

人は、いろいろとよく見せたがるものです。

サイトも、整えて、飾って、気づけば——

説明だらけの小説みたいになっていく。

だから、三度、作ったものは捨てました。

創作という点では、今はとても気が楽です。

noteは、瞬発力と初速で決まります。

読まれているか、スキが集まるか。

そんなアルゴリズムに支配されている。

そこから離れてみたら、

たとえば、物言わぬ金魚をひたすら描写していても、

何も問題がないのです。

そんな時間のなかで書いた、詩のような掌編を置いていきます。

事件性も、ドラマもありません。

テーマが必要なのかも、よくわかっていません。

それでも、なにかが——

あなたの中に、少しでも残れば。

尾ひれ

ゆっくりと尾ひれを動かす。

目は前を向いたまま、少しだけ進んで、また止まる。

口を二度、パクパク。

クルッと反転する。

背びれがゆらりと傾き、水がほんの少しだけ揺れる。

また、口を小さく動かした。

ゆっくりと尾ひれが動く。

くぐもったモーターの音が、わずかに空気を揺らす。

送り込まれる泡が、ゆらゆらと上へ昇っていく。

その泡に、時折尾ひれが触れて、チャポッという音が小さく鳴った気がした。

ときどき、口が小さくひらく。

水を確かめるように。

同じ道を泳いでいるのか、ズレた道を泳いでいるのか。

そこに時間が流れているのか。

反転し、進み、また止まる。

音もなく、静かに、透明な時間だけが積もっていく。

目が合った。

どちらがガラスの向こうなのか、それはわからない。

尾ひれに少し遅れて、水が揺れていた。

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