スタンプだけ返して、夜が終わる

《梅雨の夜、テレビの笑い声はどこか乾いていました。》


洗い物も終わって、お風呂にも入った。
梅雨の夜。
湿気のある空気が、少しひんやりする。

一人の時間。私はキッチンにいる。
ここが好きなのか、好きじゃないのかは、よくわからない。

リビングからはテレビの音が聞こえてくる。
明るく、張り詰めた感じの笑い声。
画面を見てないと、その声は楽しそうじゃなかった。

面白くて笑ってるのかな?
どうでもいいか。
たぶん、みんな、お仕事。
私も、仕事の時は、無理して笑ってる。

あれ? 私、何考えたんだっけ……

窓から向かいのマンションを眺める。
ポツポツとついた部屋の明かり。

あの中には、私と同じように、黙々と洗い物をしてる女性がいるのだろう。
黙々と洗いたいわけじゃない。
そうしないと、立ち尽くしてしまうから。
無心で洗う。
ジャーと流れる水に、言えないことを流すように。

流し台に寄りかかりながら、そんなことを考えた。

ポケットのスマホが震える。
LINEは1件。
土曜日の夜は、思ったよりも連絡が少ない。

今夜のスマホは少しだけ重い気がする。
スタンプを一つ返した。
ただ返しただけ。
見てほしいとも、見てほしくないとも思わない。

今夜はもう、考えることもしたくなかった。

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