ねえ、これ、コーヒーのお皿だよ

たまには、俺が作るよ。
そう言って台所に立つと、子どもが「パパすごーい」って笑ってくれる。
なんだか、ちょっと誇らしい。

ジュージューって音がして、
ソースの香りが立ちのぼって、
なんだか料理って楽しいな、って思う。

皿に盛りつけて、どや顔で出した。
「どう?」「おいしい?」
子どもも喜んで、妻も「ありがとう」って言ってくれた。

……たしかに、材料はもう切ってあった。
洗い物も、なんとなく妻が始めてた。
タイミングも、教えてもらった気がする。

俺は“やった感”だけ、もらってるのかもな。

なんとなく、家に居づらい。
「散歩してくる」って言って、外に出た。
寒くもないのに、ポケットに手を突っ込んで歩く。

途中、ケーキ屋の前で足が止まる。
ショーケースの中に、苺のタルト。
これ、妻が好きだったな……たぶん。

店員に「3つお願いします」って言いながら、
「あ、自分のはいいです」って言い直した。

家に帰った
ちょっとよく分からないけど皿に2個並べた。
子供の分は1個。

「なんで2つ?」って聞かれて、
「いや……いつもありがとう」って答えた。

「ねえ、これ、コーヒーのお皿だよ」
呆れたみたいに笑ってた。

多分、俺は思ってるよりだめなやつなのかもな。
そんな気がした。

このエピソードと静かに呼応する、もうひとつの物語。
👉 年に3回、焼きそばだけ。

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