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読まれない小説の話

連日、35度を超える日が続いている。エアコンの効きが悪い部屋で、自分の小説を確認する。……相変わらず、ほとんど読まれていない。うん、知ってる。"夏だから暑い"のと同じレベルで読まれない。実際、素人の小説を読むとしたら──それも、いわゆる“ラ...
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ビールは冷蔵庫の奥

《何気ない日常の中で、言わなかったこと、言えなかったこと。手伝わない彼と、何も言わない私のあいだに、今日もテレビの音が流れている。……ビールは、冷蔵庫の奥にしておいた。》ごはんを食べ終わったあと、テーブルの上には、使い終わった皿とコップが残...
八ヶ月

【麻衣編】第二六話 それだけで、良かった

《「後で連絡入れますね」誰かの期待に応えることが、ずっと自分の“役目”だと思っていた。でも今は、それだけじゃ動けない。“誰のために選ぶのか”を、自分で決められるようになった日のこと。》猫ちゃん、おはよう。……なんか、ぬいぐるみなのにあったか...
八ヶ月

【徹編】第二六話 頼りない星の下で

《「……やってみるか」言葉が浮かびかけたとき、思わずつぶやいた。動けない時間の中で、それでも、少しずつ。》ただ、画面を見ている。手はキーボードの手前に置いたまま。それ以上、動かない。中葉 薫として、何を書けばいいんだろう。……そういうことじ...
八ヶ月

【麻衣編】第二五話 卵がなかっただけなんだけど

《「なんかね、順調だよ?大丈夫、だよね?」黙っていられなくなるくらい、静かな日だった。》朝、アラームの前に目が覚めた。お天気もいい。こんな日は、だいたい順調だ。……なのに、順調すぎる気がした。 そう、ちょっと前ならだいたい順調。今は、わから...
八ヶ月

【徹編】第二五話 やってしまいました

《「おい、どうした」「実は――」なんか嫌な予感がする。朝の静けさを破るノック。戸を開けると、後輩が“気をつけ”の姿勢で立っていた。その顔を見た瞬間から、胸の奥がざわついていた。いつも通りのノリ、だけど――今日は何かが違った。まさかあんなもの...
八ヶ月

【麻衣編】第二四話 ひとつだけ、届いた

《「今日、何したっけ」「届いたんだ」そう思えた夜のこと。》事務所を出るのが遅くなってしまった。トラブルってわけじゃないけれど、細々したことはいつもつきまとう。電気を落とすと、室内は一気に暗くなる。こんなに静かな場所だったっけ。……肩に、力が...
八ヶ月

【徹編】第二四話 甘い冒険

《知らないカフェで、知らない飲み物を頼んだ。それだけのことが、今日はちょっとした冒険だった。誰かの文章に、心が少しだけ動かされた気がして。甘さの奥に、残っていたものの話。》秋山と会ってから、もう三日か。まだ、なんかショックが抜けない。まあ、...
八ヶ月

【麻衣編】第二三話 託しただけのこと

《自分で抱えることが「責任」だと思っていた。でも、それだけじゃ、誰も育たない。手放すことは、逃げることじゃない。信じて任せることも、立派な“しごと”だと思う。》スーツの袖が、少しきつく感じる朝だった。熱気のせいなのか、気持ちの問題か。だけど...
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角砂糖が崩れるとき

《雨の日って、なんとなく心までどんよりしてしまいますよね。洗濯物が乾かない、部屋がジメジメする。そんな“湿った気持ち”のまま、書いてみました。》厚い雲が、空を重くする。洗濯物が乾かない。一応、乾いてはいるのだろう。でも、さっぱりしない。タオ...