【麻衣編】おまけの話 みたらしとお茶と、静かな夜


《ほんの少しだけ、昨日の続き。
湯気の向こうにある、静かな満たされ方の話です。》


お茶のいい香りがする。
湯気がふわっと立つ。
その湯気を、そっと気をつけて、胸いっぱいに吸い込んだ。
ゆっくりと目を閉じる。
からだの奥まで、やさしい香りが広がっていく。

みたらし団子は、光に当たって艶めいていた。
とろりとした餡、小さな焦げ目。
なんか、正解って感じ。

串を持つと、人差し指にずしりと重みがかかる。
唾がわく。

身を乗り出して、お団子を口へ迎えにいく。

醤油の風味がひろがる。
そのあとに、やわらかい甘さ。

飲み込んで、しばらくして。

たぶん今、胃に落ちた。

湯呑みに手を伸ばす。
持っただけで、じんわりと熱が伝わってくる。

ひとくち、口に含む。
さっきまでの醤油の風味と甘さが、すっと消えていく。

代わりに、お茶の香りが鼻を抜けて、
温かさが喉をくだって、からだの中に広がっていく。

(こういうの、大事にしたいな)

はぁー……。

ごちそうさまでした。

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