八ヶ月

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【麻衣編】第八話 その名前を見た日

《朝ごはんの湯気にほっとした日。ふいにスマホに表示された名前が、思っていたより、自分の中に残っていた。》朝7時。今週は、特に忙しくない。今朝は少しゆっくりの朝。朝ごはんを作ったのは、いつぶりだろう。卵焼き、お新香、お味噌汁。白いご飯は昨夜セ...
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【徹編】第八話 頑張ったところで、ね

《頑張れないのか、頑張り方を忘れたのか…》今朝は、起きるのがしんどかった。重いというより、だるさが残っていた。布団から出るのも、本当にきつい。たいした距離を歩いたわけでもないのに、ふくらはぎが痛い。緊張していたせいだろう。気を張っていた分、...
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【麻衣編】第七話 取材の日

《「こうすれば、うまくいくはず」そう信じて、私たちは“理想の自分”を繕う。だけど、本当にそれでよかったのかな…》今日は、申し込まれていた取材の日。朝から、どこか落ち着かない。“自立した女性”かつて自分が目指したその言葉が、今日は“取材される...
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【徹編】第七話 取材という日

《久しぶりの取材。ただの仕事のはずだったのに、言葉にできない何かが、ずっと引っかかっていた。》お情けの仕事か…朝から、なんとなく情けなさが胸に残っていた。ボイスレコーダー、取材ノート、そしてボールペンを鞄に詰める。万年筆もあったけれど、今日...
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【麻衣編】第六話 この静けさの中で

《一人でも大丈夫なはずだった》夕方のオレンジ色に、ピンクが混ざったような空は、少しだけ寂しい感じがした。いろいろ考えながら、帰り道を歩いた。もちろん、クレープは美味しかった。けれど甘さの余韻が消えたあとに残ったのは、なんとも言えない静けさだ...
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【徹編】第六話 お疲れさまが言えない日

《会いたくないわけじゃない。ただ、今の自分を説明する言葉が見つからなかったんだ》夕方、たまたま用事があって、かつて勤めていた会社のそばまで来た。オフィス街の外れにある、少し古びたビル。先日も取材の打ち合わせで来たばかり。自分が通っていた場所...
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【麻衣編】第五話 刺さったままの言葉

《その言葉だけは、どこかに残ってしまった。》いよいよ明日は、取材。別にいつもの自分でいいはずなのに、「どう見られるか」が少し気になる。自分をよく見せたい。それって当たり前のことだと思う。でも、それは“自分”なんだろうか――ふと、そんな感覚が...
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【徹編】第五話 取材という名の怖さ

《ちゃんとしたいと思うたびに、僕は“準備のための準備”に手を伸ばしてしまう。》「取材か……」ため息まじりにそんな言葉が出る。取材そのものはそんなに大変じゃないと思う。たまに、結構大変って思うときもある。取材って、そんなもの。別に、何か特別な...
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【麻衣編】第四話 がんばれた日の夜

《がんばったはずなのに、どうして…》夜のオフィスは静かだった。時計を見れば、もう9時を回っている。窓の外には、ちらほらとビルの灯り。街はまだ完全には眠っていないけれど、このフロアだけは、ひと足先に深夜に片足を突っ込んでいた。「今日は頑張れた...
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【徹編】第四話 苦いだけの時間

《特別なことは、今日もきっと起きない。……起こさないようにしているだけかもしれない。》夕べは寝たのか寝ないのかよくわからない夜だった。明け方の新聞配達のバイクの音でソファーに座って、そのままずっとそこにいた。いつものカフェ。……いや、“喫茶...