2025-06

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なぜ『八ヶ月』を書こうと思ったのか

「なぜこの物語を書こうと思ったのか」たまに聞かれますが、正直に言えば――理由は、ありません。月並みかもしれませんが、ただ、なぜか「書きたい」と思ったから。小説を書いたこともなかったし、書き方のお作法も知りませんでした。noteの使い方も、も...
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本当は、いちごミルク

《好きなものを、好きって言うだけのことが、どうしてこんなに難しいんだろう。》「なんでお前、ストロベリーなんか食べてんの?」「なんでって……好きだから、じゃダメ?」「好きとかじゃないんだよ。みんなバニラって言ってるだろ。ほら、有名なシェフも“...
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キュッ、って鳴った音だけが、ごほうびだった

《掃除って、心もきれいになるって言うけれど—— じゃあ、なんで私は こんな気持ちになるの?》暑くなってくると、気になるシンクの汚れ。ジメジメした季節、食中毒も怖い。スポンジで、ひたすら擦る。厄介な角。段差。一晩で、ぬるっとする。クレンザーを...
八ヶ月

【麻衣編】第十八話 こういう夢ならもう一度

《聴いたことのあるメロディなのに、曲名だけが思い出せない。でも、気づいたら口ずさんでいた――記憶も気持ちも、ぜんぶ曖昧なままなのに、なぜか今日は、それでいい気がした。》打ち合わせを終えて、午後からの出社。車が一台通れるくらいの、細い道。重な...
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ただいま工事中
八ヶ月

【徹編】第十八話 予期せぬ連載

《今日は何も起こらない――はずだった。だけど、それは突然始まる。》今日は、何もない静かな日になる予定だった。何の音もしない、誰も来ない。というか、僕にはそれほどの予定もない。だから毎日、静かなのかもしれない。さすがに嫌になる時もあるよ。でも...
八ヶ月

【麻衣編】第十七話 噛み合わないまま、それでも私は進んだ

《パッとしない。ううん、そんなことは、ない。ただ――私の中で、何かが噛み合わない。》今日は打ち合わせ。柚葉を連れていく。そろそろ、この先のことも考えないと。 移動中の車内、柚葉は黙って資料を確認し、商談直前には私に一式を手渡してくれた。慣れ...
八ヶ月

【徹編】第十七話 投稿ボタンを押した。

《読まれないと思えば、投稿できる。でも、本当は……知られたくなかったのかもしれない。》静かだ。遠くに聞こえる車の音と、たまに子どもが歌いながら自転車で駆け抜けていくのか――そのくらいしか音が聞こえない。僕みたいな人間には、そんな子どもの声で...
八ヶ月

【麻衣編】第十六話 見なかったことにする

《その空気の中に、何かがひっそり通りすぎていった気がした。きっと、気のせいだと思うけれど。》午後二時すぎ。蒸し暑いのに、エアコン点検の業者さんが入ったらしくて急遽買ってきたレトロデザインの扇風機が空しく回っている。スタッフの子が、扇風機に向...
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あの声に似てる

…あの声に似てる。そう思った。 古い校舎。窓からは斜めに光が差し込んでいる。床の板がワックスの艶で、その光を鈍く反射している。深い茶色が、少しだけあたたかい。 ギシギシと音を立てて、木の階段を上る。左手はずっと壁に触れていた。少し、ざらざら...